湯豆腐のようななにか

はじめに少しだけ気合を入れて。その後はだらんと。

ジュエリーハーツ・アカデミア合同誌に参加いたしました。

 先の2023年夏コミックマーケット(C103)にて、Planador様主宰の同人アンソロに参加させていただきました。

 

 

 タイトルは「jewelryBOX~ジュエリー・ハーツ・アカデミア合同誌~」です(リンク先はメロンブックス通販サイト)

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2026840


 元ネタのゲームは超常の力の源である、当人の希求が具現化した物質である「意思」を用いて戦う、少年少女の熱血バトルもの18禁美少女ゲームです。キャラがかわいい。
 私はその中の登場人物である狼男の獣人「ヴェオ」のアフターストーリー二次創作小説を執筆いたしました。楽しんでくださっていれば幸いです。

 

 以下、その二次創作小説に関して思っていたことなどあれこれを徒然なるままに書き記しておこうと思います。本編+私の二次創作小説のネタバレ注意ですが、よければお付き合いください。

 

 

 大前提として私はヴェオとノアの絡みが好きです。ヴェオ×ノアなのか、ノア×ヴェオなのかといえば私にとってはリバ可能ですがそれはさておき、あの二人の関係性推しと言って差し支えありません。当然執筆する二次創作小説もヴェオとノアの関係性を前面に推し出したものにしたいと考えました。

 ところがこのカップル? の関係性描出において最大の問題があります。それはヴェオの意志が「オニキス=孤高を愛する」ことです。言い方を変えますと、ヴェオとノアをただくんずほぐれつさせるだけでは、孤高を愛するヴェオのオニキスはただ輝きを失うのみになります。そのようなヴェオはヴェオではないように「私は(ここ重要)」感じます。

 ではどうすれば良いか、それなりに考えました。得た結論は「関係性推しであるということは両者が現在進行形で恋仲であることは不要である」ということでした。これを実現可能な設定に落とし込むと「ヴェオにノアの遺志である三国融和を果たさせる」こととなります。

 オニキスの身体能力上昇のみでそれを実現することは難しい+「三国融和はペガサス組全員の希望である」ことを踏まえ、作中放置されており気になっていた要素である「ノアの薔薇水晶が最終バトルでロストして以降完全に放置されている」問題を利用して、ノアの遺志持ちのヴェオ、という形で二人の関係性を実現することを考えました。

 

 

 さて三国融和は、作中でノアが同種族から銃撃されたことからもわかる通り、非常に困難です。現在の三種族を取り巻く環境が劣悪であるほど、それが解消された際に三国融和の困難さが輝きます。そこで世界を困難な状況にするためにわざと偽エンド後のアフターを世界設定や時系列設定に選びました。

 三国融和に関して様々な要素が困難要因として襲い掛かりますが、それらは私の二次創作小説内で描いた通りです。最大の問題であろう食料に関して、石化した土地ではそもそも人間の食料を得ることが難しく、それをノアの薔薇水晶でいわば「土地を癒しながら」ヴェオが世界を練り歩くことを考えていました。私の二次創作小説でやたら食料の話が描写されたのはこの「困難さ」の強調の一種でした。

 

 ところで石化した川で井戸を作っている話を執筆しているあたりで、ふと思うことがありました。それは「ノアの遺志に従って三国融和に動いているヴェオ」は果たして孤高の人であり得るのだろうか、という疑問です。つまり言葉を悪くしてしまえば「ノアの思想の操り人形に進んでなり下がったヴェオ」は孤高ではない、という「私なりの(ここ重要)」価値観になります。

 これを解消するためにはどうすれば良いかは単純で、ノアの思想となんら関係なくヴェオが心の底から三国融和を希求すればよい、ということになります。ここで上記「ノアの遺志を持って練り歩くヴェオ」のプロットを捨て、「ノアに背中を押され、自らの意思で三国融和のために世界を練り歩くヴェオ」にプロットを変更しました。

 既にノアが遺志となった時空間においてノアに背中を押させるということは、文字通りノアがある種救世主のように祭り上げられている状況とそれに感銘を受けるヴェオという構図が必要になります。この時点で「ノアの遺志が鉱脈化して、困難な状況にある人間を守護する存在となっている」という大要素が決定しました。あとはそれを表現する要素として上記の「ノアの遺志で土地を癒す」のアイディアを流用し、その合間に入れられそうであった「人間とその他の人種の軋轢という困難要素」をエッセンスとして加えた、ということで二次創作小説のプロットが完成しました。

 

 上記から想像される通り、一番腐心したところは「ノアにヴェオの背中を押させること」であり、それは本二次創作小説では海中におけるヴェオとノアとの「会話」になります。原作の作中ではヴェオとノアとは盛んに「独り言」というフレーズが用いられていた通り、彼彼女らは「腹を割ったお話し合い」は行えません。「話し合い」でヴェオの意志が曲がってしまった場合、それではヴェオを孤高と呼ぶことが出来ないと執筆者は考えているためです。ゆえにこの「会話」はほとんどノアからの台詞のみにしようと決め、このノア(薔薇水晶)の「会話」=「演説」のフレーズをたいそう苦労して考えました。

 上記「ヴェオ自身の意思で三国融和を行う」という条件から「ノア側からヴェオに三国融和に協力するよう促す台詞は絶対に入れられない」という縛りが加わり、さらに「人間、人」が本作では明確に使い分けなければならない単語であること(人:ヴァンパイア種、セリオン種、人間の三種を包含した表現、人間は人間種のみを指す表現)、ノア自身の性格である「自分を若干卑下しつつも一本芯を通している」ということが縛りとして加わり、上記「演説」は本当に難産でありました。

 

 いやはや、本当に難産なカップルというか関係性の二人というか。「他人と濃厚に絡んではいけない」というキャラクターは本当に難しかったです。「オニキスを失ったヴェオはヴェオじゃないやい」という私の中の原理主義的思想と折り合いをつけるのは驚くほど大変でしたが、個人的に納得のいく「二人」の関係性が描けたのではないかと感じています。

 

 長々としたあとがたりにお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

以下よもやま話

・タイトルの「ヴェオのミチシルベ」はその場の思いつきで決まったものです。小説の最後に象徴的なフレーズを入れようと思って数日悩んでいたのですが、仕事の昼休憩中にジュエハOP1でDDRのステップを踏んでいた時に思いつきました。蓋を開ければこれ以上ないハマった台詞になったように思います。

 

・同人誌のページ割で、私の二次創作小説の後にすのうさんのヴェオノア絵を入れさせてもらうか、はくがんさんのノア絵を入れさせてもらうか、で主宰のPlanadorさんから相談がありました。すのうさんもはくがんさんも素晴らしい絵でいらして悩みました。結局の順番は本誌の通りですが、濃厚なヴェオノアを感じてくださっていれば幸いです。

 

・もともとC102で合同誌発行の予定であり、実は2022年11月の時点で主宰様に原稿を提出しておりました。合同誌参加者の皆様、(テーマ被り防止などの観点で)主題選択などでご迷惑をおかけいたしました。主宰のPlanadorさんも大変お疲れ様でした。夏コミ現地出来なかったのが心残りですが、紙版到着を楽しみにしております。