アインシュタインより愛を込めて 感想
アインシュタインより愛を込めて 感想
◎Abstract
・有村ロミ目当てならやめとけ
・有村ロミは「相棒」であり、エロゲヒロインではない
・ただしシステム、絵、音楽、シナリオの細かな台詞回しなど全体としては高水準。
※ネタバレ注意
Glovetyから2020年に発売されたゲームで、新島氏がシナリオ、きみしま青氏が原画を担当した作品である。この時点で「恋×シンアイ彼女」という単語が頭をよぎるが、残念ながら当方は「恋×シンアイ彼女」を未プレイである。このため本作とこの作品とを比較検討した考察は行うことが出来ないと初めに断っておくことにする(どうせ誰かがやっているだろう)。
さて本作にわたしが興味を持った理由の非常に大きな要素を占めるものが、本作センターヒロインである「有村ロミ」というキャラクターの存在であった。秀才で・ちんまくて・常識人的受け答えが出来る、というキャラは筆者の性癖にドストライクであった。オープニング曲もアップテンポで聴き心地がよく、遅ればせながら購入した次第だった。
本作に対する筆者の感想を一言で書くとするならば「表紙のキャラ目当て(有村ロミ)でこのゲームを買うのであればそれ相応の覚悟が必要です(1)」というAmazonのレビューと全く同じコメントになる。更に換言するのであれば、「有村ロミは『相棒』であり、エロゲヒロインではない」というコメントになる。
「エロゲヒロイン」ではない、とはどういうことか述べていく。昔のツイートになるが「エロゲはある種の少女漫画的要素を含む」旨述べている(2)。その理由としては筆者の過去ツイート(3)や過去のエロゲ感想(その花が咲いたら、僕はまた君に出逢う 総評感想(4))に記載しているものであるが、『エロゲと少女漫画とは少女の心的機微を濃厚に描写するという点に於いて極めて類似する要素を孕んでいる』と思われるからである。キャラゲー萌えゲーに分類されるエロゲにおいては、attractiveなヒロイン像が求められているわけで、その意味で恋をしている女の子というものは抜群にattractiveである(私見)。
さて上記の前提で本作のセンターヒロインたる有村ロミのスタンスを振り返ってみよう。比村茜(=有村ロミの旧名)は母親からの虐待を受けていた。主人公愛内も父の論文捏造疑惑で社会から迫害されていた。この状況下で二人は7年前に愛内父の名誉回復のために子供二人で小笠原諸島で冒険を行った。その際主人公は異常な力(=新世界の扉の鍵)を得、有村ロミは母親から逃れる術を得た。まず7年前の時点では、二人の間柄はあくまでも「相棒」と呼ぶに相応しいものであった。
現代の時間軸においては、有村ロミは命短い厭世的な愛内をサポート(後述するが目的は別にある)するために愛内の前に現れた。
そして愛内の病に決着をつけるために決戦の地小笠原を、彼と一緒に拳銃を持参して訪れるのであった。さてこの時点においてもやはり7年前の冒険の鏡写しの構図であり、二人はあくまでも「相棒」であった。二人の日常会話の端々に小学生のような掛け合いと、それに対してノリツッコミとして「はぁ、なにこのやり取り。私達小学生なの……?」と述べる有村ロミがおり、7年前の鏡写しの関係であると暗に示唆しているように思える。
さてここで先程後述に回した有村ロミの目的を述べる。目的は2つで、一つが主人公愛内に新世界の扉を開かせない(=世界を破滅させない)こと、そしてもう一つが愛内と心中することである。
1つ目の新世界の扉を開かせない、ということについて述べる。7年前「相棒」であった二人は似た者同士であった。どの意味で似た者かと言えば「なにもかもどうでもいい。こんな世界消えてしまえば良い。それがかなわないなら、自分が消えてしまいたい」という厭世的思想にあった。この思想の原因となった事象は有村ロミ側からみれば実母からの虐待という家庭環境であろう。さて愛内はそんな厭世的な7年前の比村茜=有村ロミと交流する過程で、有村ロミの真っ暗な世界にささやかな光を灯した。有村ロミはこれに大層感謝し、人生をかけてお返しをしようとしていた。それは「世界は捨てたもんじゃない」ということを伝えることであったというものである。
第2に二人で心中することについては上手く記載が出来ないが、7年前からずっとそれだけが望みだったとあり、彼だけが彼女の生きがいになっていた可能性はあろう。
ここに甘酸っぱい恋愛要素はまるで絡まない。あくまでも救済してもらった感謝から相手方を救済し返して、そのまま共に消え去ろうというもので、あくまで相棒としての情が主である。もちろん前提としてお互いが親愛の情を持っていないと成立しないが、恋愛の情とは別にあるだろう。
結局有村ロミは徹頭徹尾「主人公の相棒」であって、「主人公の彼女」ではなかったと思われる。それの傍証として有村ロミのHシーン枠がある。有村ロミのHシーンはラストバトル直前の敵本拠地目の前で唐突に挿入される(意味深)1回のみである。Hシーンの回数を増やせないかと筆者なりに考えてみたものの、ほかシナリオの中に入れられる要素はほとんどなかった、というのはプレイ者ほぼ全員が納得するところであろう。なぜ他の場所でHシーンが増やせなかったかと想像すれば同様の帰結に行き着くと思われる。
有村ロミの「人生」を眺めたいのであれば、悪くはない。有村ロミという「エロゲヒロイン」を眺めたいのなら勧めない、とはなんとも微妙な線を行った作品であったと思う。
以下雑感。
・絵も音楽も、台詞回しも質は高い。本当に。
・ボクシングヒロインと階下の喫茶店のお姉さん、完全にただの下敷きでは。
・前半の下敷きルートたちがあまりにもエロゲエロゲして、後半では秘密結社との熱血バトルモノになっているので、その前半と後半の落差が大きい。どっちをメイン顧客に据えてもどっちかから不評を買うのでは
・有村ロミのような常識人で、ちんまい秀才系ヒロインもっとください。
・猛は狂言回しとしては優秀だが、あまりにも狂言回しとしての役割が鼻についていた。
・Σ(彗星の使徒)に「あなたは肉体をなくして魂だけになりました」「私には死の定義がわかりませんが、この星の定義に照らし合わせると、あなたは間違いなく死んでいます」と述べておいて、主人公の肉体は保存しておきました復活ですおめでとう、というエンディングは正直蛇足では。
(1)アインシュタインより愛を込めて Amazon カスタマーレビュー
(2)Twitter Planador氏
某エロゲシナリオおじさん先生、エロゲシナリオは漫画のコマ割りと近しいとこがあるので小説より漫画寄りのイメージとのこと。その上でヒロイン視点の描写の両によっては十分少女漫画≒エロゲシナリオになってもおかしくはないはずで。 https://t.co/rL2D8UKr4m
— Planador@暁京楓幼馴染らいしゅきbot (@FMrose175) 2019年6月17日
https://twitter.com/FMrose175/status/1140601575880056832
(3)Twitter やーみ
エッチゲーマー、そこそこ少女漫画と相性が良い説
— やーみ (@suxamethonium28) 2019年6月17日
(いずれも少女の心理的機微を濃密に描こうとする傾向がある点において(私見)) https://t.co/U19SC4DkLE
https://twitter.com/suxamethonium28/status/1140601017228152832
(4)その花が咲いたら、また僕は君に出逢う 総評感想 やーみ
suxamethonium28.hatenadiary.jp
http://suxamethonium28.hatenadiary.jp/entry/2019/06/22/210000