湯豆腐のようななにか

はじめに少しだけ気合を入れて。その後はだらんと。

箱庭ロジック 総評感想

箱庭ロジック 総評感想
執筆者:やーみ @Suxamethonium28 ※ネタバレ注意

 

 ココのSMファンディスクは結構シコれます(和姦快楽攻め好き勢の感想)。

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※なおやーみは「与えたい」側

 

 それは置いておいて、この作品はEDを意外とまとめてきたな、と私は読了後に思えた。設定上ははっきりと申して穴がありすぎであるし、その意味でリアリ「ティ」は全く無い。正直この辺りをチクチクと指摘するのは些か野暮(退屈)かと思うので、別項(※)で指摘する。何を意外とまとめてきたかと言えば、様々なルートやキャラクターの背景に「金か親かの不条理」を見いだせた結果、作品に統一感が見えたことであった。

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親に苦労している一例(狂言回しはここでも健在)

 この作品のテーマは「不条理」ということになるのであろうか。今作において大抵の場合登場人物たちは「金」か「親」かに苦労している。第一に「金」であって、本作における失踪した三人は金銭上の問題があった。またそれらのうちの一人の失踪を手引きした「喫茶店の娘」も金に苦労している様子が描かれていた。

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そりゃおっかねーな

 

 特にこの「金」に関してで印象深いルートが「喫茶店の娘」の貧すれば鈍する、を地で行くものであった。その「娘」の母がねずみ講に引っかかり、結果詐欺師側の末端に行ってしまったことで、「娘」の家族は離散した。「娘」は家族を再び取り戻すために、後ろ暗いアルバイトの斡旋仲介業で金を稼ごうとしている、というものだ。

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別の意味で胸を突かれるシーン(血反吐)

 

 なかなか印象的なルートであって、確かに貧すれば鈍する、である。この「娘」の行為が何法に引っかかるのかは筆者の専門から外れるので確実なことは言えないが、「娘」の行為の構図は母がしたねずみ講のそれと全く同じ(枢軸+出先機関としての末端切り捨て要員+騙される貧民)であって、仮にこれが表に露呈した場合、「娘」の家族は再び強い私刑の俎上に乗ってしまうことは想像に難くない。

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 「娘」の鈍するがゆえの振舞いが却って「家族」を引き離しかねないということが、「娘」の切羽詰まり具合を象徴していると思われる。

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 このように本作においては、不条理を形作る要素としての「貧」がふんだんに仕込まれている。この視点で例の「宝くじルート」を見ると、大変ironicalでよろしい。戯れに買った宝くじで億単位のお金を得たココとその父が、ヒステリックにココ本人を虐待する母から逃れ、主人公にも黙って箱庭市から脱出するルートである。極めて短いBadENDではあったが、「結局金なのだよ金」と言わんばかりのルートであった。なお本稿はこのParagraphを書きたいがために筆を執っています。

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宝くじルートプレイ直後の僕です

 「親」の不条理はまあ思春期あるあるで、特段考察のし甲斐もないので割愛。

 

 絵柄は大変可愛らしく、鍵システムもかなり煩雑ではあるものの「情報の小出し」「金と親とでテーマを分ける」などで機能していたと思う。ココも霧架も狂言回しとしてしっかり機能しており、少なくとも共通ルートのテキストを読み勧めることに関して、退屈さを覚えることはなかった。翠の海といい推理モノと呼べるほどのはしていないが、そういうことを求める作品ではないのだろう。

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小気味いい漫才だった。


別項※
 この作品が作中で指定したシステムには穴が多すぎる。順々に挙げていくと、

1:警察も流石に行方不明になった場所が特定の箇所に寄っていて、そこから秘密の地下通路の存在には充分気がつけると思う。警察と大学がグルだったとしたならば、ココの一言で教会に機動隊を参集させるのは合理的ではない。

 

2:実験が所詮「人を切り刻む」程度の話であり、それで何が判るのか。街一つ作って下手したら云千億のお金を費やして得られるデータとしてはあまりにも弱い。PaperにするにはN数が弱すぎるし、正しく「実験」なら再現性と被験者の均一性と対照群の設定をもう少し考えておきたい。

 

3:実験の同意を得るのが家族一人でいい、というルールが正直嗤える。遺族になりうる人間から訴訟・警察沙汰にされないための対策としてのこのルールならば、兄の同意一つで霧架が被験者になることは相互に矛盾する(実際、車椅子探偵のBADENDでは霧架の親から霧架失踪に関する失踪届が出ている)。
 その他些細なものはあるが、箱庭市のシステム上の大きな穴はこの辺りか。

 

 


 以下蛇足。
 箱庭療法は実際に存在する検査・治療法であり、適切に検索するといくつかの文献もHitはする。不勉強なので文献の存在が有るのかは知らないのだが、いわゆる「検者の解釈バイアス」をどう排除しているのかは結構興味深い。ある事象に対して何らかの意味付けを行うものすべてに言える問題ではあるのだが。

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箱庭療法って実際どうやるんでしょうね?

 

 ざっと点数は69-72。エロゲとして見るなら60点台。「お金は大事だよ」と共感した分を入れれば72。ココのSMファンディスクは80点台を付けてもいい。普段天ノ川沙夜ちゃんをおかずにしている筆者が、二回連続でココのファンディスクをおかずにしたと言う辺りでお察しください。